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神奈川フィルの新音楽監督、シュナイトに聞く

2007-05-07-Mon 17:06:29 │EDIT

神奈川フィルの新音楽監督、シュナイトに聞く

2007年05月07日15時27分

 宗教曲の権威で、新作の初演にも意欲的なドイツの巨匠、ハンス・マルティン・シュナイトが先月、神奈川フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任した。指揮者だけでなく作曲家、オルガニスト、音楽学者と多彩な顔を持つ教養人。音楽への向き合い方や現在の日本への思いなどを聞いた。

 

写真この満面の笑みで、演奏会場の空気をいつもほっとくつろがせる

 就任最初の公演で、ビバルディの「四季」などを指揮した。あおりすぎず、失速させず。絶妙なテンポでオケをもり立てた。しかし、演奏後はすぐ舞台袖に引っ込み、その後も楽団員の後ろに控えめに立っているだけ。自分ではなく楽団員ひとりひとりをねぎらって、との「親心」がにじみ出るたたずまいだった。

 「質も内容もみんなに注目される魅力的な楽団に育てたい。そういえば小泉前首相は横須賀出身でしたよね。ぜひ一度定期演奏会に来てくださいって、私から手紙を書いてみようかな」

 ベルリン・フィルなどドイツの名だたる楽団と共演してきた。急逝したカール・リヒターの後を継ぎ、84年にミュンヘン・バッハ合唱団・管弦楽団の芸術監督になり、宗教曲の演奏で広く知られるようになった。現代音楽の演奏やオペラの指揮にも定評がある。

 01年から東京芸術大学の客員教授を務めたこともあり、今や朝ご飯は梅干しに昆布のつくだ煮、という日本びいき。初来日は90年、ベルリン国立歌劇場来日公演でモーツァルトの「魔笛」を振った。「初来日の思い出? 燕尾(えんび)服が届かず、汗くさい4番ホルンの服を借りたこと。あと、サインを求める聴衆の長蛇の列にも驚いた」

 あの頃から日本人はずいぶん変わったと振り返る。電車で若い男性が座り、おばあさんが立っていても当たり前。「日本人になりかわって」若者をしかったり、親にかまわれず泣いている子供をあやしたりすることもあるという。

 「皆それぞれにいい人なのに、なぜ公の場では人を思いやれなくなってしまうのか。日本人がよき秩序を失いつつあるのが悲しい」

 現在76歳。太陽のような笑顔で常に周囲をなごませ、神奈川フィルの事務局員からも「愛の人」と呼ばれる。2番目の妻や長男ら多くの近しい人に先立たれる波乱に満ちた道のりを、その風情からはうかがい知ることはできない。

 「苦しいことが多いほど人はより深くほほえむことができる。私にとってすべての苦悩は、人生と音楽を理解する力になる。音楽はほかのどの芸術より、人間そのものに向かっている芸術だと思えるのです」

次回公演は11日

 神奈川フィルとの共演は、5月は11日午後7時、横浜みなとみらいホール。ブラームス「交響曲第2番」など。6月は2日午後3時、横浜の神奈川県立音楽堂。ストラビンスキーの組曲「プルチネルラ」など。神奈川フィル(045・226・5107)。

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