昭和中期、若手の映画スターがその出演作品とタイアップしたシングルを吹き込み、メジャーレーベルが発売していた。音楽産業が激変した今日でも、同様の販売戦略の下、俳優の音楽が次々とリリースされている。
トップアイドル女優沢尻エリカが再び動いた。2006年、主演ドラマのタイアップ曲を役名でリリースしたが、仕上がりを急いだか、「歌手沢尻」への評価は厳しかった。自分で作詞、アートディレクションまで手がけた今作にはただならぬ気迫が見える。前作に続き作曲は、YUIの曲なども手掛けるCOZZi(福岡出身)。手堅いパワーポップナンバーで勝負し、自動車メーカーとの連動で本人出演のCMも大量オンエアされ、大ヒットを記録している。流行のゴス(ゴシックパンクの略)を巧みに取り入れたいでたちは、世間のみる「女王様」「意地悪」のイメージを自ら茶化しているのか。そうであれば、さすがとしかいいようがない。
歌の補正技術の進歩で、俳優が歌う「それなりの使い捨て音楽」があふれている。ただその中には音楽ファンが目を向けるべき宝も眠っている。門外漢と言って無視するのはもったいない。
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