米アップルコンピュータ社が、ビートルズのレコード会社である英アップル・コープス社に、リンゴの商標を使っての音楽事業参入は1991年に交わした協定に違反しているとして訴えられている裁判で、アップルコンピュータ社側の弁論が30日(英国時間)、ロンドンの高等法院で始まった。
アップルコンピュータ社の主席弁護人、アンソニー・グラビナー氏は、市場最大手の『iTunes(アイチューンズ) Music Store』は第一義的にデータ転送サービスであり、「データ転送はわれわれの使用範囲に入っており」協定で認められているものだと主張した。
アップル・コープス社は、ポール・マッカートニー氏、リンゴ・スター氏、故ジョン・レノン氏の未亡人ヨーコ・オノ氏、故ジョージ・ハリスン氏の遺産管財人が共同所有している。同社はこれまでに2度、アップルコンピュータ社を訴えている。
1991年の和解に際して取り決められた協定で、両者がそれぞれのリンゴの形のロゴを独占的に使用する分野の範囲が設定された。また、和解条件の一部として、アップルコンピュータ社はアップル・コープス社に2600万ドルを支払った。
今回争点となっているのは、この協定の解釈。アップル・コープス社は、アップルコンピュータ社側の責任の認定と、協定遵守を命じる判決を求めている。責任が認められたならば、次の段階で損害額の評価が行なわれる。
グラビナー氏は、アップルコンピュータ社はネット上での違法コピー行為に代わる有効な手段を提供することで、音楽業界を救う手助けをしたと主張し、ビートルズはどのオンライン音楽サービスに対しても楽曲のライセンス供与を頑なに拒否していると指摘した。
「アップルコンピュータ社はこれまで、すべての大手コンテンツ提供者を説得し、iTunes Music Storeから楽曲を配信する許可を得てきた。ビートルズの全曲目に関しては、アップル・コープス社を説得できなかったが、結局アップル・コープス社は、オンライン楽曲配信に乗り出す機会を逃したのかもしれない」とグラビナー氏は述べた。
携帯音楽プレーヤー『iPod』(アイポッド)の販売台数は1400万台以上、iTunes Music Storeからの楽曲ダウンロードも10億曲を超えており、アップルコンピュータ社は音楽業界で強い影響力を持つ存在になった。
審理は来週まで続き、ビートルズの元マネージャーでアップル・コープス社の取締役であるニール・アスピナル氏と、アップルコンピュータ社のエディー・キュー副社長(アプリケーション担当)の証言が予定されている。
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